時代。

御月の友人の情報で、長くはないと思っていましたが…予想以上に早い死去にびっくりの御月ですこんばんは。…えぇと、中内いさお(字が出ないんだよなぁ…)ダイエー元会長のお話です。
御月にとって中内さんという人は、ダイエーというよりはむしろ、母校の理事長でありまして。在学時はまぁいろいろといろいろなお話を聞いたりしていました。講義においてダイエーの経営のあり方を批判するとくびが飛ぶとかね。当たり前にただの噂、でしたけどね。ただ、裏を返せばそれだけの力を持っていると思われたわけで。なんていうのかなぁ…ただの「理事長」の枠に収まらない『何か』があったというか。正直言って、申し訳ないですけど今の理事長は影が薄いように思えてしまうのです。
晩年はダイエーの凋落などがあり、問題点も多くあげられていましたが、日本の経済史において、中内いさお、という人は、かなり強烈な個性をもって記されるんでしょうねぇ…。5年以上前の話になりますが、講義のときにある先生が、「ダイエーの経営のあり方については賛否両論あると思うが、『小売店で家電を買う』ことができるのは、間違いなく中内さんの功績である」というようなことをおっしゃっていました。なんでも、家電量販店あるいはメーカー系列店でしか買えなかった家電を、家電メーカーとガチでやりあった挙句、小売店でも売れるようにしたのだとか。おかげで今でも某家電メーカー(どこだったか忘れた)とは仲が悪い、なんて話でした。
ダイエーに一番近い企業つったら、多分、ファースト・リテイリングだと思います。服飾業界に対する流通革命を行った「ユニクロ」と、食品業界に対する流通革命を起こしたダイエーと。あるいは、「スーパー」という形態を作ったダイエーと、宅配という業界を生み出したヤマトとか。
それがなぜ、この現状に繋がるかというと…多分、多くの人が感じ、指摘していると思いますが、「後継者の不在」でしょうね。ステレオタイプな分析になりますが、やはり強烈なカリスマとリーダーシップでもってのし上がった会社ってのは、しばしば、だからこそ後継者が育ちにくいわけで。当たり前ですが、トップがトップであり続ければ、その下ってのはなかなか育たないわけです。そういう意味では、小泉首相が「あと1年」ときっぱり言い切るのって、暗に「あと1年の間で、きちんと成長しておけよ」という後継者候補に対する圧力と見ることもできるわけですが…それはさておき。実力のあるトップが頂点に居続けている間は、大きな方向転換を打ち出しにくい、というのもあると思います。今までの方向で成功してきたわけですからね。そのため、時代の流れに対応しにくくなるし…成長しすぎて、動きが鈍くなっていたのもあるかもしれません。
「いいものを安く」というのは経営における「王道」といえます。当たり前のことですが、だからこそ難しく…ダイエーは、それで成功しました。おそらく、小売だけではなく製造業もそういう方向だったのではないでしょうか。けれども、今は消費者の心理が大きく変わってしまった、と思います。少ロット大量生産から…逆の方向へ。価値観が多様化しすぎて、「いいものを安く」というだけでは追いつかないというか。
単純にスーパーの牛肉の場合、昔は例えばバラ、ヒレ、肩ロース、レバーしかなかったとしたら。今はそれに加え、リブロース・サーロイン・タン・ハラミ・ハツも普通に扱うようになり、しかも産地がUS・AU・国産の3種類、さらにさらに国産の場合は産地までも選ぶ人が増えた、と。………その全てにおいて対応し、かつ「いいものを安く」ってのはかなり無理があるわけですな。実際、昔は扱ってなかった食材が、今は普通にスーパーに並んでますよね。パプリカとかルッコラとか、そういう洋食系の野菜とか。ゴーヤもそうですけど。
「いいものを、安く」。多分それは、みんなが一様に豊かになり始めた時代だったから、成功したんでしょうね。それぞれがそれぞれの価値観において豊かになることを目指す今の社会では、多分無理…てか、実際無理だったわけで。
 
 
 
…昭和は遠くなりにけり。
今度、パラダイム・シフトが起きるとしたら、どんな社会になるんでしょうね…。